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スレート屋根の特徴やメンテナンス方法を解説!製造された時期ごとに異なる寿命や注意点とは?
過去スレート屋根のお住まいの調査・点検を数千軒と行ってきた経験から、スレート屋根の劣化や不具合を見逃さないためのチェックポイント、メンテナンス方法まで一挙にご紹介いたします。
ご自宅がスレート屋根材の方、お住まいの健康を末永く守るためぜひご参考になさってください。
戸建ての住宅によく使用されているスレート屋根は、セメントを主材料として屋根材に加工した「化粧スレート」という種類になります。
サイズは横幅910mm・縦幅414mmのものが一般的であり、厚みは約5㎜と薄い形状をしています。
瓦屋根に比べて軽量かつ安価な施工が可能であることから高い普及率を誇っているスレートは、住宅街を見渡せばあちこちで見かけるほど馴染み深い屋根材です。
ですが、「今のお家はスレート屋根だから安心して過ごせる」という訳にもいかず、実は製造された時期によって耐久性に問題のある種類が存在していることなど、ご自宅の屋根に使用されているからこそ知っておかなければならない情報が多くあるのです。
「化粧スレート」と「天然スレート」
スレート屋根には大きく分けて「化粧スレート」と「天然スレート」の2種類があります。
化粧スレート
「化粧スレート」はセメントと繊維を混ぜて作られた板状の屋根材で、冒頭でもご説明したような普及率の高い種類となります。
手軽な価格に対して耐久性も十分に備わっていることから、一般住宅の屋根材として広く使われてきました。
天然スレート
「天然スレート」は粘板岩を薄く加工した、文字通り天然物のスレート屋根材です。
独特の風合いと高級感があり、耐久性にも非常に優れているのですが、かなり高価であることから日本の住宅では滅多に見かけることがありません。
国内の有名どころでは東京駅の屋根に天然スレートが使用されていますので、立ち寄った際には目にするチャンスですね。
コロニアルやカラーベストの呼び分けについて
化粧スレートは「コロニアル」や「カラーベスト」とも呼ばれることが多く、呼び分けについては「何が違うんだろう?」と疑問に思われるかもしれませんが、実はどちらも化粧スレートの言い換えと捉えてしまって問題ありません。
というのも、化粧スレートとして普及した商品のほとんどはケイミュー株式会社(旧クボタ)から販売されていた「コロニアル」だったため、『スレート屋根と言えばコロニアル』という認識から呼び方も定着していった背景があります。
「カラーベスト」も同様に、コロニアルが属しているシリーズ名であることから化粧スレートの別名として扱われるようになりました。
波型スレート
セメントを主材料としている化粧スレートには、住宅屋根に使用されている種類以外にも「波型スレート」が存在しています。
波型スレートは波状に加工されたスレート材で、耐久性や耐火性に優れることから大型の工場や倉庫で見かけられます。
スレート屋根には、かつて「アスベスト(石綿)」が含まれていた時期があります。
アスベストは優れた耐久性と断熱性を持っていたため、1960年代から2006年までの間、スレートをはじめとする多くの建材に使用されていました。
しかし、アスベストは健康に深刻な影響を及ぼす可能性があることが明らかになり、2006年9月1日を境に日本国内での使用が禁止されています。
※屋根材への使用は2004年に禁止されました。
そのため、それ以前に建てられた住宅のスレート屋根にはアスベストが含まれている可能性があるのです。
アスベストの健康問題は一時期メディアで大きく扱われていましたので、記憶に残っているという方にとっては「我が家の屋根にアスベストが残っているかもしれないの?」と不安な気持ちを抱かれるかもしれません。
もしスレートに含まれていたとしても、ご自身で割ったり粉砕などしない限りは日常生活において人体に何ら影響は無いとされています。ご安心ください。
なぜアスベストの話題を取り上げているかと言いますと、耐久性やリフォームに深く関わっているためです。
スレートは屋根から撤去する際に、どうしてもひび割れたり砕けてしまいます。
そうした撤去作業時にスレートに含まれているアスベストが飛散すると健康被害を引き起こす恐れがありますので、処理には専門的な対応が必要となるのです。
もしご自宅のスレート屋根がアスベストを含んでいる場合、葺き替える時には撤去と処分に必要となる金額が高くなることに留意しましょう。
アスベストの調査義務
葺き替えに限らず、スレート屋根の工事を行う場合にはアスベストが含まれているかを事前に調査する義務が業者にはあります。
2023年10月以降からは、調査を行う者が『建築物石綿含有建材調査者』に類する資格を保有していることも義務付けられています。
工事を依頼するお客様側にとってはあまり関係の無いお話に思えるかもしれませんが、アスベストを含む可能性があるスレート屋根への工事には徹底したルールが存在しておりますので、その変化にしっかりと対応している業者へ施工を頼むことが安心した工事のためには大切となります。
耐久性に問題のあるノンアスベストのスレート
アスベストの使用が禁止された後のスレートであれば、工事での撤去や処分費用が高くならないから一安心……そう思いたくはあるのですが、実はアスベストを含まないスレート屋根は別の問題を抱えている可能性があります。
アスベストの規制は2006年よりもずっと前から予想されていたため、メーカー各社はそれぞれ代替となるノンアスベストのスレートを1990年代ごろには販売していました。
しかし、アスベストを使用していたスレートに比べると初期のノンアスベストスレートは強度が低く、耐久性には大きな問題がありました。
特に、1990年代から2000年代前半に製造されたノンアスベストスレートは寿命が短い製品も多く、早い段階で劣化が進むため大きな問題になっています。
この時代のスレートは第二世代と表現されることもあり、メンテナンスのために塗装を行ったとしても全く意味をなさないため、長く使用し続けることを目的とするよりも雨漏りが発生する前にリフォームを進めた方が良いスレート屋根と言えます。
最近のスレート屋根は問題ない?
ここまでの説明を見ると、アスベスト規制後のスレートには希望が持てなくなるかもしれませんね…。
ですがご安心ください!
技術の進歩により、現在のノンアスベストスレートは品質が向上し、耐久性も改善されています。
今のスレートの主流となっている「コロニアルグラッサ」や「コロニアルクァッド」といった商品はノンアスベストですが、期待耐用年数は約30年と長く使用し続けられる性能となっています。
耐久性の問題を克服したスレートは第三世代とされています。
スレート屋根の寿命は製造時期やアスベストの有無に大きく左右されます。
第一世代:アスベストを含んでいるスレート
アスベストが含まれているスレート屋根は40年近い耐久性があり、スレートの中でも長寿命です。
アスベストの使用禁止は2006年頃ですが、アスベストが含まれているスレートの製造が続けられていたのは主に1990年代前半までとなります。
この時期に建てられたお住まいなどは、いくら長寿命のスレートと言えど耐用年数の限界が近づいているため、リフォームでの対応をご検討ください。
第二世代:2008年頃までに製造されたアスベストを含んでいないスレート
2008年頃までのノンアスベストスレートは、耐用年数が15年から長くても20年程度とされています。
耐久性の問題が発覚するまでにはある程度の時間が経過していたことから、多くのお住まいに施工されています。
第二世代のスレート屋根が使用されている場合、塗装工事での防水性・耐候性回復は意味を成しませんので、こちらもリフォームでの対応が必要です。
第三世代:耐久性に問題のない現在のノンアスベストスレート
第二世代のスレートの問題を受け、2000年代後半では耐久性についての十分な検証を行った上で新しいノンアスベストスレートが販売されました。
高耐久となった現在のスレートは、期待耐用年数が30年となっております。
基本的には塗装でのメンテナンスを繰り返し、スレートの劣化状態からリフォームが必要かを判断します。
価格の安さ
スレート屋根の大きなメリットは、コストパフォーマンスの良さです。
スレートは他の屋根材と比較して製造コストが低く、軽量で扱いやすいことから施工もスムーズに行えるため、総合的な費用はかなり抑えやすいです。
軽量性
スレート屋根は1㎡あたり約20kgと非常に軽量で、重量のある陶器瓦と比べて建物への負担が少なく、耐震性に優れています。
屋根の総重量が低いと建物の揺れは軽減されるため、地震の多い日本では特に重宝されていました。
実際に、スレートは阪神・淡路大震災(1995年)と東日本大震災(2011年)の後では市場での出荷数が他の屋根材よりも高くなり、地震に強い屋根として長く評価されていたことがわかります。
施工できる業者の多さ
スレート屋根は施工のしやすさも魅力の一つです。
スレート材は薄く、軽量で扱いやすいため、広範囲の屋根であっても施工は比較的容易に行えます。
また、スレートの知識や施工経験が豊富な施工業者は多く存在しているため、リフォームや修理が任せやすいこともメリットでしょう。
スレート屋根は市場シェアのトップに立ち続けていたため、施工や修理の技術を持つ業者が豊富なんです。
もちろん、街の屋根やさんもスレート屋根の修理・リフォームはかなりの件数をこなしていますので、工事はご安心してお任せくださいね。
スレート屋根の特徴やメリットについて、解説の節々で「スレート屋根って今は主流じゃないのかな?」「もっと軽量な金属屋根へのリフォームをご近所さんがしていたけど、スレートに対する評価は変わっているのかも」と感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
現在、新築市場で最も高いシェア率となっているのが金属屋根です。
今後のメンテナンス・リフォームの場面では必ずと言っていいほど検討候補に挙がりますので、その特徴などはぜひ確認しておきましょう。
金属屋根の評価ポイント1:スレートよりも軽量
「軽量であることがメリット」とご紹介したスレート屋根は、ノンアスベストの問題がきっかけで瓦屋根にシェア率を一時的に抜かれていたものの、東日本大震災後には日本で再び軽量な屋根材の需要が高まったことによって出荷数を回復させるに至りました。
ただ、屋根材の中で最も軽量だった金属屋根の評価も2000年以降ではじわじわと高くなってきていましたので、耐震性を求めるようになった屋根市場では震災後を堺にガルバリウム鋼板を筆頭とした金属屋根材がスレート以上にシェア率を伸ばす結果となったのです。
金属屋根はスレートの1/4程度の重量ですので、当然の流れとも言えますね。
金属屋根の評価ポイント2:屋根材としての性能の高さ
ガルバリウム鋼板などの金属屋根材は耐久性に優れ、材質的にもスレートのようにひび割れてしまう心配がありません。
錆対策として定期的なメンテナンスは欠かせませんが、それぞれが基本的に30年以上の耐用年数を有しているため、安心して屋根に使用することができます。
また、ガルバリウム鋼板製の屋根材には断熱材と一体型になっている商品も主流となっており、お住いの断熱効果を高めることに貢献してくれるというメリットもあります。
金属屋根の評価ポイント3:屋根カバー工法に活用しやすい
軽量な金属屋根は、既存の屋根に新しい屋根材を被せる「屋根カバー工法」にかなり適しているため、リフォーム現場においても近年の使用率はダントツで高くなっています。
屋根を被せることによる重量増加を最も抑えることができる軽量性が重宝され、耐久性の低下してきたスレート屋根へのリフォーム手段として金属屋根へのカバー工法がよく選ばれるようになってきているのです。
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状態別で必要な補修・リフォームや各工事の費用相場を解説いたします!
ひび割れの部分にコーキング材を充填する、コーキング材で割れた部分を貼り合わせるなどの補修をします。
どんな小さいヒビであっても、そこから雨水が浸入してくる可能性があるので、早めに補修してあげましょう。
ただし、スレート屋根が全体的に劣化してきている場合には、補修を行っても別の箇所でまたひび割れが多発するため、あまり意味のない工事になってしまいます。
スレートの傷み具体から、補修で問題ないのか、それとも塗装やリフォームが必要なのかを判断しましょう。
スレートの簡易補修の費用相場:税込 33,000円~55,000円
強風で棟板金が浮いてしまったり、被害を受けた場合は交換します。
棟板金を固定している貫板(芯木)も同時に交換しますので、以前よりも風に強い屋根になります。
(樹脂製の貫板)
木材よりも耐腐食性に優れた樹脂製の貫板があります。
街の屋根やさんでは、棟板金の交換時には樹脂素材の貫板をおすすめしています。
(小屋裏の換気棟)
お部屋の暑さ、小屋裏(屋根裏)の湿気にお悩みの方は通風を確保できる換気棟はいかがでしょうか。
熱や湿気を効率良く排出するので、棟板金交換工事をするなら一押しの建材です。
棟板金交換工事の費用相場:税込154,000円~275,000円
台風シーズン前点検がおすすめです
「棟板金が飛んで落下してしまった」「自宅の屋根を見上げたら板金が剥がれている」など、台風後や強風後にご依頼とお問合せが増える被害が棟板金の浮きや飛散です。
猛威を振るった2019年の令和元年東日本台風(台風19号)でも、実に多くの方からお悩みのお問合せをいただきました。
二次被害、三次被害への発展を避けるため、できるだけ台風シーズン前に街の屋根やさんの無料点検をご利用ください。
そうしていただくことで安心してお過ごしいただけると思います。
また、台風通過後は訪問業者による点検商法が横行しやすく、棟板金が一番の標的とされます。
事前に棟板金の状態をチェックしておけば悪質な業者への対策になりますので、そういった意味でもシーズン前に業者の点検を受けておくと安心できるのです。
スレート材自体の耐久性は大丈夫でも、表面が劣化している場合は塗装を行い、塗膜による保護で防水性や耐候性を高めます。
最初にコケや汚れなどを高圧洗浄機で洗い流し、その後、下塗り、中塗り、上塗りと最低3回の重ね塗りを行います。
場所や素材によってはそれ以上に塗りを重ねることもございます。
最近は遮熱や防汚といった機能を持った塗料もございます。
メンテナンスついでの対策として、機能性を持った塗料をご検討してみてはいかがでしょうか。
屋根塗装工事の費用相場:税込484,000円~880,000円
スレート屋根の塗装工事では縁切りが超重要!
屋根材の劣化を防ぎ、防水性を高めるために行う屋根塗装ですが、実はスレート屋根に塗装を行ったことが原因で雨漏りが発生してしまったという事例も存在します。
「塗装の専門家が工事を行うのにそんなことがあるの?」と思ってしまっても仕方ありませんが、事実としてあり得るのです。
本来、塗装を行う際には屋根材同士の重なり部分に適切な隙間を設けなくてはなりません。
この隙間を設ける作業を縁切りと呼びます。
業者にその知識がない場合は、必要な隙間を塗装によって埋めてしまい、それが原因となり雨漏りを誘発してしまうことがあるのです。
塗装を依頼する際には、お住まいや雨漏りの構造まで熟知した業者に依頼するようにしましょう。
私たち街の屋根やさんでは、スレート屋根塗装時にタスペーサーという部材を用いて縁切りを施すようにしています。
屋根全体の傷みが激しくても、下地が健全である場合は屋根の葺き替えではなく、屋根カバー工法でのリフォームが可能です。
スレートの場合、原材料にアスベストを含んでいる可能性があることはページの前半でお伝えしましたね。
アスベストを含むスレートの撤去や処分には特別な作業工程が必須となり、ノンアスベストのスレートに比べて葺き替え工事の費用が嵩みやすいのです。
ですが、これまでの屋根の上に新しい屋根を被せる屋根カバー工法は廃材がほぼ発生しません。
したがって廃材処理費もほぼ発生しないので、アスベストを含んだスレート屋根ではカバー工法を行うことで費用負担を減らすといった選択がよく取られます。
ただし、その後も長く住み続ける予定がある場合、いずれアスベストを含んだスレートの処分費用も負担することになるため、今後のライフプランも考慮しつつ葺き替え工事を選ぶことをご検討ください。
屋根が二重になる屋根カバー工法には、遮音性や断熱性が増すというメリットもあります。
屋根カバー工事の費用相場:税込877,800円~1,430,000円
カバー工法は金属屋根しか無理なのでしょうか?
ご安心ください、そんなことはございません。
元のスレート屋根よりも軽量であれば問題ないため、アスファルトシングルやハイブリッド瓦などといった屋根材による屋根カバー工法も可能です。ご遠慮なくご相談ください。
スレートや防水紙、野地板の劣化が激しい場合は屋根の葺き替え工事を行います。
これまでのスレートの解体費、廃材処理費、新しい屋根材の材料費、そして人件費や足場代といった工事費用が掛かるので、カバー工法よりも高額となります。
ただし、雨漏り原因となる防水紙の劣化に加え、屋根全体を支えている野地板に対しても増し張りでの補強が行えますので、今後は長期間にわたって屋根の不具合や不安について悩むことがなくなるという費用に見合った大きなメリットがあります。
当然、防水紙も屋根材もいつか寿命を迎えることを考えれば、必ずしなければならないリフォームと言えますね。
街の屋根やさんでは、葺き替えに使用する新しい屋根にはスレート材よりも軽い金属屋根材をお勧めしております。
現在の金属屋根には「夏は暑い」「雨音がうるさい」「安っぽい」といったイメージは当てはまりません。
それに加え、ガルバリウム鋼板は耐腐食性にも優れています。
屋根葺き替え工事の費用相場:税込1,097,800円~2,200,000円
屋根はお住まいの中でも最も過酷な環境に身を置いており、劣化の進行は外壁などと比較すると断然早いと言えます。
つまり、屋根という部位はそれだけ劣化や不具合をこまめに点検・メンテナンスをしなくてはいけないということを意識しておいていただきたい箇所なのです。
街の屋根やさんでは、日本で最も使用されている屋根材であるスレートの点検や補修、そしてリフォームをおかげ様でこれまで何千軒と施工させていただいてきました。
「屋根の寿命が気になる」「新築時と比較して色褪せが進んできている」「そろそろ葺き替えや屋根カバーを検討しているけどどちらがいいの?」など、屋根のプロフェッショナルである私たちがスレート屋根に関するどんなご相談やお悩みにもお応えいたします!
スレート屋根の特徴やメンテナンス方法を解説!まとめ
●スレート屋根の耐用年数は20年~30年です。塗装や棟板金交換、屋根カバーや葺き替えといったリフォームなどメンテナンスサイクルを意識して適切に行いましょう。
●スレート屋根にはアスベスト含有のものもあり、リフォーム時には慎重な対応が必要です。
●屋根塗装を行うことでスレート屋根の耐久性を高め、長く使用し続けることが可能です。
●ノンアスベストのスレートには強度や耐久性の課題があるため、メンテナンスではなく葺き替えなどのリフォームが重要です。
●屋根の寿命が近づいてきた築20年~30年で屋根カバー工法や葺き替えといったリフォームの検討が必要となる時期が訪れます。